合宿 [トシの生活]
仙台に向けて出発したのは4月下旬、ゴールデンウィークが始まる直前でした。
長距離バスで移動したのですが、まだ震災の影響で福島県や宮城県の道路は凹凸や亀裂が見られました。
災害支援に向かう自衛隊の車両、民間のバスなども目に付き、これから自分も被災地に向かうんだという実感が湧いてきました。
仙台に着き、警備会社の東北支店に行きました。
トシが寝泊まりする場所は警備会社がテナントとして入っているビルの、別の階にあります。
出張というとビジネスホテルに泊まるのが一般的ですが、今回は特殊な事情があってビルの一階分を借り切っての合宿です。
床にはブルーシート。エレベーターを降りたところでスリッパに履き替えます。
部屋の奥には二段ベッドが10台(20人分)。
手前が共有部分で、会議室などでよく見かける横長のテーブルと折り畳み椅子があります。
テレビ・冷蔵庫・炊飯ジャー・湯沸かしポットなどの電化製品と、食器・調理器具。
食料品は米・味噌・各種調味料の他、カップ麺(ただしあまり売れ筋ではない)が山ほどあります。
あるものは自由に食べられますがおかずなどは各自が工夫して偏った食事にならないようにしなければなりません。
ここで寝泊まりする隊員(会社ではそう呼ぶ)は様々な時間帯で勤務しているので常に誰かしら寝ている人がいると思った方がよく、話し声やテレビの音量に気を使います。
ここでの一番特徴的な規則は消灯時間で、夜11時から朝6時までが消灯時間となります。
避難所と同じとは言いませんが個人的な空間や時間がかなり制約を受けるのは間違いないです。
もちろんトシはそれを覚悟した上で来ています。
期間限定でのことだし、災害復旧という目的のためなら個人的なことはある程度我慢しようという気になります。
仕事の内容と同じく生まれて初めての経験になりますが、今まで楽をして生きて来たから少しは厳しい環境に身を置くのもいいのではないかと思います。
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