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野良猫その後 [トシの生活]


野良猫その後

 我が家の招かれざる客、野良猫君。押入れの一角を占拠したまま立てこもっています。昨夜は
仕方なく一夜を共にしましたが、いつまでも居てもらっては困ります。だいたい、君はずっと
そこに居て飲まず食わずで過ごせるのかい?おじさんは面倒見てあげないよ。

 朝起きて、そろそろ押入れの中も飽きただろう、と襖を開けて逃げる機会を与えてやったのに
動こうとしません。特別な悪さをしなくても、君がそこに居るだけでおじさんは落ち着かなくて
困るんだが・・・。

 人間に全くなついていない野良猫君ですから、追い出そうと下手なことをすれば逆ギレ
されてしまう恐れもあります。紳士的に外へ誘導したいのですが。

 午前中は埒があかず、こう着状態のままトシが外出する時間になりました。留守中に
部屋の中を徘徊されても迷惑なので襖はしっかり閉めて、敷布団を立て掛けて重しにしました。
帰って来る頃にはさすがに押入れの中に飽きて出て来るだろう、そしたら浴室のドアを開けて
帰してやろう、そんな心積もりで居ました。

 さて、外出から帰って来たら、異変を感じました。台所で野良猫君がひと暴れしたような
跡があります。カーテンが左右から開けられて外の景色がよく見えます。きっと何度も
飛び上がっては窓からの脱出を試みたのでしょう。カーテンにはしがみついた爪あとも
ありました。空き缶が散乱し、ごみをあさった形跡もありました。

 猫を甘く見ていましたが、トシが開け閉めするのを見て襖は横に動かすと開くんだという
ことを理解したようです。それに加えて、布団で重しをしたにもかかわらず開けてしまえる
だけの力もあったようです。

 トシが押入れの中を覗くと、今朝見たのと同じ場所に居ました。さて、どうやって外へ
誘導しようか。

 まず、餌で釣る作戦です。冷蔵庫からウインナーソーセージを持って来て小さい大きさに
かじり取り、野良猫君の近くに置きました。しかし近寄ろうともしません。もっと近くに
置いてやろうと手を伸ばしたら「フーッ!」と威嚇してきます。危ない危ない。

 次に、3段ある衣装ケースの引き出しを一段ずつ抜いていきました。外枠だけが残った
状態ですのでお互いの姿がよく見えるようになりました。

 今度は引き出しを抜いてできた空間にもソーセージのかけらを置いてみました。でも
やはり食べようとしません。

 飼われたことのある猫ならば両手でつかんで引っ張り出すことも出来たかもしれません。
しかし今回の相手はうっかり手を出すと爪で引っかかれるのが落ちです。

 だんだんこっちがしびれを切らしてきました。相手はこの先いったいどうしたいのかも
自分で分からぬくせに持久戦の構えを見せています。相手のペースにはまっていては
解決の糸口は見つかりません。紳士的な対応にも限界が来ました。

 もう、誘導するのではなくて追い出すべきだと悟りました。逆ギレして引っかかれない
程度の強硬手段に訴えるしか手がありません。

 押入れの中に雑巾が何枚か置いてあったのですが、それを一枚ずつ丸めて野良猫君
めがけて投げつけました。雑巾から逃れるためにちょっとよけたら、今度はそのよけた
場所めがけて投げつけます。野良猫君は「なにするんだよ」とでも言いたげにこっちに
向かって歯をむき出します。

 かまうものですか。こちらはさらに雑巾を投げつけ、相手の身体にぶつけたりもします。
野良猫君の身体は奥からだんだん手前の方へと移動して来ました。すでに雑巾がある場所
へは戻ろうとしません。後一息です。

 投げる雑巾が無くなりかけた頃、相手も観念してようやく押入れの外へ出て来ました。
トシはすかさず襖を閉めます。これで押入れの占拠の心配はなくなりました。

 もちろん野良猫君の逃げ道はちゃんと用意してありました。台所の窓の鍵を開け、今度は
激突しなくて済むように15cmぐらい窓を開けておきました。

 立てこもることに集中していた野良猫君もようやく開いている窓に気づき、窓から
飛び降りて出て行きました。やれやれ。


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